バーテンダー(♀)「……○○さん、もうそろそろよした方がいいんじゃありませんか?」
バーテンダー(♀)「……○○さん、もうそろそろよした方がいいんじゃありませんか?」
1
バーテンダー「……いいえ、もう駄目です。呂律回ってませんよ?」
バーテンダー「私は人を楽しませるためにお酒を提供しているのであって、人を駄目にするためではありません。」
バーテンダー「なにがあったかは知りませんけど、もういい加減にしておかないと明日に響きますよ?」
バーテンダー「……彼女さん、もうこっちに来てるんでしょう?あんまり待たせちゃ可哀想ですよ。」
バーテンダー「…………ああ、なるほど…。」
バーテンダー「………だからって、お酒に逃げてちゃいけません。彼女さんだって、ちょっと機嫌が悪かっただけかもしれないじゃありませんか。」
バーテンダー「これからまた、じっくり話し合えばどうにかなるかもしれないでしょう?だから、あんまり悲観的にならないでください。」
バーテンダー「………そんなに悲しそうにお酒を飲んでいると、見ているこっちも悲しくなってしまいます…。」
2
バーテンダー「……はい、お水。ゆっくり飲んでくださいね。少しは楽になると思います。」
バーテンダー「少しは落ち着きましたか?……いえいえ、これくらいのこと。お気になさらず。」
バーテンダー「……?どうかしましたか?私の顔なんかじっと見たりして。……恥ずかしいじゃありませんか。」
バーテンダー「…………。」
バーテンダー「……なにを馬鹿なことを言ってるんですか。○○さんには彼女さんがいるでしょう?」
バーテンダー「やり直そうとしているときに、他の女を口説いてどうするんですか。まったく、仕方のない人ですね。」
バーテンダー「……あんまり、そういうこと言わないほうがいいですよ。……私以外の人には。」
3
バーテンダー「……さて、そろそろお店閉めますよ。あとは鍵をかけて終わりです。」
バーテンダー「ほーら、寝るんだったらきちんとお家で寝てください。いつまでもここを開けっ放しになんて出来ないんですから。」
バーテンダー「まったく、甘えないの。いい大人が猫なで声で、やめてくださいよ。もう。」
バーテンダー「生憎○○さんのお家がどこだか分からないので○○さんをお送りすることは出来ませんが、タクシーくらいは呼んであげますよ?」
バーテンダー「……………はぁ。その調子だと、きちんと運転手さんに住所が言えるかどうかも怪しいですね。」
バーテンダー「…………。」
バーテンダー「………このままそこらへんで眠って、凍えられても困りますね。」
バーテンダー「困る、ので……」
バーテンダー「……………。」
バーテンダー「……うち、来ます…?」
4
バーテンダー「言っておきますけど、寝るだけですからね。」
バーテンダー「それ以外のこと、とか……駄目ですからね。」
バーテンダー「ちょっと、聞いてますっ?…………呆れた、まったくもう…。」
バーテンダー「…………。」
バーテンダー「今日のところは、私の部屋で寝かせてあげますから。明日はきちんと、彼女さんとお話しないと駄目ですよ?」
バーテンダー「……本当は彼女さんがいるのに、私のお部屋に招くっていうのも気が引けるんですけど……」
バーテンダー「………他でもない、常連さんのためですから。……仕方ない、ですよね。」
5
バーテンダー「……ほんと、呆れた人ですね。もうほとんど眠っちゃってるじゃありませんか。」
バーテンダー「どうせさっき私が言ったことも、ほとんど聞いてはいないんでしょうね。」
バーテンダー「…………。」
バーテンダー「……だったら……ちょっとくらい、イタズラでもしちゃおっかなー……?」
バーテンダー「今起きないと、イタズラ……しちゃいますよ……?」
バーテンダー「…………○○さんが、いけないんですからね…。」
バーテンダー「………ちゅっ。」
6
バーテンダー「……ほんと、もう、いい加減にしてくださいよ、○○さん。」
バーテンダー「だいいち、なんなんですか。私の目の前で彼女と上手くいってないとか、普通そんなこと言います?」
バーテンダー「こんな、単なるバーの店主相手に。そんな大事なこと……お酒が入ってるとはいえ、普通言いますか?」
バーテンダー「私がどんな思いで、普段あなたの惚気話を聞いていたか、想像もできないでしょう?」
バーテンダー「あなたがあの人の話で目元が緩むたび、口角がほんの少し上がるたび、私がいったい、どんな表情で聞いてたか分かりますか?」
バーテンダー「いや、まあ……出来るだけ顔には出ないように心掛けてはいたんですけど……それでも……すっごく、辛かったんですからねっ。」
バーテンダー「それなのに……あんなに幸せそうにしていたのに……なんなんですか、急に……上手くいってないとか…。」
バーテンダー「……そんなの、もう……駄目に決まってるじゃありませんかっ。不幸な話なのに、嬉しくって仕方がないんですよっ。」
7
バーテンダー「前からずっと抱えてた、このもやもやした気持ちが……一気に、澄み切って、溢れ出して…。」
バーテンダー「だからこうして、あなたが酔いつぶれてるのをいいことに、私の家に来ませんかとか、そんなこと言ってしまうんですっ。」
バーテンダー「送り狼ならぬ、迎え狼ってやつですか?あははっ。………ははっ…ほんと……なんなんですかっ…。」
バーテンダー「…………○○さんの……ばかっ……。」
バーテンダー「こんな、気持ちよさそうに眠ったりして……私、今なら○○さんに、どんなことだって出来ちゃうんですよ?分かってますっ?」
バーテンダー「○○さんのケータイから、彼女さんの連絡先を消したりとか、そんなことだって出来ちゃうんですっ。いいんですかっ?」
バーテンダー「………本当に………本当に……出来ちゃうんですからねっ……。」
8
バーテンダー「……………。」
バーテンダー「………明日になったら、ちゃんと、彼女さんに連絡取って、きちんと話し合わなきゃ駄目ですよ…。」
バーテンダー「『今までごめん』とか、『もう一度やりなおそう』とか……そういうこと、言わなきゃ駄目です…。」
バーテンダー「そうしたらきっと、彼女さんだって考えなおしてくれて、またきっと、上手くいきますから…。」
バーテンダー「そうやって仲直りして、また私に惚気話、話せるようになりますから…。」
バーテンダー「そのたびに私の胸が苦しくなって……でも、あなたの笑顔で、胸が温かくなったりして……。」
バーテンダー「きっと私には……そういうので、いいんでしょうね…。」
バーテンダー「……本当はいいわけないって分かってます…。でも……きっとあなたは、その方が幸せだから…。」
バーテンダー「あなたが幸せそうにお酒を飲んでいる姿を見るのが……きっと私にとっても、一番の幸せになるんです。」
バーテンダー「今は違くても、きっとそのうち……そうなるんです。」
9
バーテンダー「……さてと、そろそろタクシー呼びましょうか。○○さんもはやく横になりたいですもんね?……聞いてないか。」
バーテンダー「自分の部屋に帰るんなら今のうちですよ。じゃないと、私の部屋で寝ることになっちゃいますよ?」
バーテンダー「いいんですかー?独身女の部屋に泊まったりなんかしたら、きっとよくないことが起きちゃいますよー?」
バーテンダー「………本当に出来たら、どれだけ楽か…。」
バーテンダー「……○○さんのお返事がないので、このまま私の部屋に運んじゃいますよ。今まで男の人なんて入れたことないから、貴重な体験になりますね?」
バーテンダー「きっとこれからも、誰も入れないと思います。誰が他の男の人も……もちろん、あなたもこれが最初で最後になるでしょう。」
バーテンダー「………………。」
10
バーテンダー「……あなたはきっと、一生私と一緒になることなんてない。」
バーテンダー「でも一瞬だけ。たとえば、たった一夜。それもあなたが眠っているだけなら。」
バーテンダー「……それくらいなら、きっと………神様も許してくれますよね…?」
バーテンダー「だって、あなたは今夜アプリコットフィズを召し上がったのだもの。……『貴方と明日を迎えたい』……。」
バーテンダー「そんな淡い思いくらい、この一夜だけでも……。」
28 :以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2017/04/29(土) 03:16:35.488 id:NAmd30r8d
あと>>23のは
バーテンダー「でも一瞬だけ。たとえば、たった一夜。それもあなたが眠っているだけなら。」
↓
バーテンダー「でも一瞬だけ。たとえば、たった一夜。それもあなたが眠っているあいだだけなら。」
に直して読んでね
ごめんね